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病院に行った話① 2/11

咬んだ犬はレトリバー種。

(あんな大人しそうで賢そうな犬が咬むの?)と思うかもしれない
確かにぬるい犬なのだが、世の中に存在するすべての犬は咬むのである。

でも、ウチの犬は怒った事も無いし咬むとは思えないという人も多いだろう
だがそういう犬は咬むに至る沸点が非常に高いだけなのだ

これはグラフを作って説明したいところだが長くなるうえ文章では伝えるのが難しいので
またの機会にしたいと思う。

それにしても久しぶりに本気でやられたらしい、左手の感覚がまだ戻ってこない
応急処置のガムテを剥がして傷口を検分するとする。

hospital01_02b.jpg



親指の表と裏、指の付け根の手のひらに3つ穴が開いている、かなり深そうではある
表と裏の穴は同じような位置にあるので、

(貫通してるんじゃね?)と思い、窓から太陽にかざしてみるが見えるわけもない
我ながらバカな行動である。

取りあえず2~3分、水で洗い流しているとだんだん感覚が戻ってきた
感覚が戻るということは痛覚も戻ってくるので激しく変な顔になる。



hospital01_02a.jpg




                       ― つづく ―

病院に行った話① 1/11

仕事で動物を扱っていると、怪我をすることもあります。

種族が違う物が接触するわけですから当然と言えば当然ですね、
めったに大きな怪我にはならないものですが、たま~に病院送りになる事も…

ではでは、病院に行った話①




「ガリッ」

嫌~な音が脳に響き、左手に衝撃と圧迫を感じる。
まぁ早い話、犬に咬まれたわけです

あたしの心は広くもなんともないので鉄アレイでもぶつけてやろうかと思うが
犬はまだ歯を剥いたままうなっている

こんな時は怒ったりして強く出てもあまり良い事になった記憶がない
空のペットボトルでポカリとやるだけで勘弁してやることにする。



hospital01_01a.jpg



左手から手首にかけて生温かい物を感じるので、取りあえずティシューとガムテープで止血をし
壁に掛けてあるリード紐を1本引っこ抜き、真ん中で輪っかを1つ作る

目でフェイントを一つ入れて素早く犬の吻に掛け
上で1回キュッ、下で1回キュッ、最後に耳の後ろでキュッと締め上げる

これで即席の口輪の出来上がりだ、しばらくはこれでなんとかなる
犬の攻撃オプションは所詮口だけなのである。


hospital01_01b.jpg




                       ― つづく ―

羊飼いになった話① 10/10

帰り間際、売店で自家製ソーセージをお土産に購入し、順路を出口に向かっていると
後ろからパパパパーンと場内作業用の軽トラが近づいてきた、よく見ると運転席にはボブが座っている。

「ヘーイ」
声をかけてくるから手を振ってやる

「 you~○○~○○○~job~○○~○~with me? 」
お前は才能があるから俺と一緒に羊飼いにならないか?みたいな事を言ってくる。

羊飼いか … … 昔、進路相談の時に

「あたしはオーストラリアにいって羊飼いになる」
と、言って職員室を凍りつかせたのを思い出す。

「…考えておくよ、でもウチにはもう羊がいるんだ」と、言ってやると

「 Ha,ha,ha,ha 」
と、笑いながら手を振って、ナンバーのついてない軽トラで走り去って行った。

「少し、やりたいと思ったでしょ?」
相方さんが聞いてくる。

「まぁね…」
曖昧に返事を返す

あたしにはあたしの仕事がある、三桁を超える数の手下どもがいるのだ…
仕事のことが頭に浮かぶが、すぐに頭の中から締め出す

「さぁ、行こう」

今日は無責任に遊びに来たのだ、仕事の話はナイナイしよう
そして、逃げる準備をしてから相方さんに声を掛ける

「バックから何か出てねーか?」



hitsujikai10.jpg





                   羊飼いになった話①
                    
                    ― おわり ―

羊飼いになった話① 9/10

その後ショーは、ボブが犬を使って青い羊を仕分ける作業を見せてくれて終わりになった。

牧場内を歩きながらずっと疑問に思っていた事を考える。

結局あたしは何の手伝いに出たのだろう?ただ1人で羊と踊っただけではないか?
ブツブツ考えていると、察したのか相方さんがこう言ってくる

「ねーねーあれ、あんたが成功させたらダメだったんじゃない?」

「ん?」

「だから、人間が失敗したことを、犬が成功させるってのをやりたかったんでしょ」

ああ、そうか…その段取りをあたしが台無しにしてしまったと…どうりでボブが固まるわけだ。

「あーあたしがいらん事したんだ、悪い事したかな?」

「別にいいんじゃね?みんな盛り上がっていたし」

「だよね~」

「あんたの変な動きも見れたし」

「あん?」

「ってか、必死すぎて何かキモかったし」

「 … … 」

と言うような可愛くない事を言いやがるので
さっき拾ったシマヘビの抜け殻をそっとバッグの中に潜ませてやる
後でほえずらかくといい。


hitsujikai09.jpg




                      ― つづく ―

羊飼いになった話① 8/10

先頭の羊があたしの横を通り抜ける
どうやら人間にぶつかるつもりはないらしい。

まずは、左側を駆け抜けようとする青い羊に体当たりをかましてコースを変え柵(小)に向かって叩き込む。

振り返って2頭目を探す、草原の緑の中で青い羊はよく目立つ
5m先に目標がいるのが目に入る、しかし目標との間に2頭のじゃまな羊がいる。

2・3歩助走をつけ、じゃまな羊に手を掛けると2頭まとめて背中を滑り抜け
そのままの勢いで青い羊にヘッドロック、並走しながら柵(小)に誘導する。

(さて、3頭目は?)振り返った瞬間、青い斜線があたしの横をすり抜けた
(ちぃ)と思うが、こちらも身体が反応し、反転して追いかける。

トップスピードはともかく初速はあたしの方が速い
これでも学生時代は100mを11秒台で走っていたのだ。

尻の毛を鷲掴みにしてズルズル引きずり、柵(小)のゲートをくぐらせる。

hitsujikai08a.jpg


青い羊を仕分け終わり、我に戻って振り返ると、お客が大喜びで拍手をくれている
スタンディングオベーションでも起こりそうな勢いだ。

ステージを見るとボブが唖然とした顔でこちらをみていた
先ほどまでのニヤケ顔はどっかにいったらしい。


(あちゃ~やってしまった)と思う、羊の群れが迫って来たときに意識が飛んでしまった
あたしは無難に一般人のフリをしておきたかったのだ。

「もう、座ってもいい?」
とボブに聞く

「OK、OK、OK、サンキュー、サンキュー」
とボブ、そしてあたしを指差すと

「ユーハ、ニホンジンノ、カワヲカブッタ、ニュージーランドノヒツジカイダ」
と言って会場の笑いを取り、手を差し出してきた。

(いや、あたしは日本人の動物屋だよ)と思いながら握手を交わす
今度はあたしの方がニヤケ顔だっただろう。


hitsujikai08b.jpg





                       ― つづく ―
プロフィール

sanchz

Author:sanchz
職業動物家

現在
「パンプキンファーム」オーナー

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