スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

若気の至りの話① 10/10

その後、イベントは滞りなく進み撤収作業に入った
この作業は見ていて面白いのか(動物を捕まえるので)けっこう見物人が残っている

あたしがワラビーを捕まえようと尻尾を狙っていると、後ろに人の気配を感じる
振り返るとそこには先ほどの年配ポリスと若ポリスが立っていた

「さっきはどうも…」
あいさつすると

「あの~実はね…」
と年配ポリスが話を切り出してくる

「あの後、ホコテンにウサギが出たって持ち込まれてね…」

「は?ノラウサギ?」
よく見ると、ポリスが持っている紙袋がガサガサ動いている

「それで、俺が暑に持って帰っても処分することになるから可哀想でね…」



wakage01_10a.jpg




なるほど…あたしに引き取ってほしいわけだ (ケッ) と思うが
彼にはケンカを止めてもらった恩がある、あのまま放置されてたら良くも悪くもろくな事にはならなかっただろう

「いいよ、あたしが連れて帰るよ、ネコもいなくなったからさ」
ポリスがホッとした顔をする

「助かるよ○○さん、ではまた」
彼らは帰っていった

しかしこの市街地でノラウサギとは如何なものか?妙な事もあるものだ
袋を覗くといわゆる雑種のミニウサギが鼻を揺らせている、♀っぽい顔つきである

このウサギは、その後数年あたしと共に仕事をすることになるのだが、それはまた後の話で


撤収作業もあらかた片付いて、バイトさんに全員分のリンゴ飴を買いに行ってもらう

「あんたはどうせ食べないからいらないでしょ?」
よく分かってらっしゃる、甘い物は苦手なのだ

「うん…」
と言いかけて

「…あ、今日はあたしの分も買ってきて」
と言い直す

「へぇ~珍しい…」
不思議そな表情を浮かべるが

「いいよ、おけーい」
といって駆けていく

殺伐な事があったからだろうか、何となく甘酸っぱい物が欲しい気分なのだ


だってリンゴ飴って気分を落ち着かせてくれそうじゃない?



wakage01_10b.jpg




                     若気の至りの話①
                      ― おわり ―

スポンサーサイト

若気の至りの話① 9/10

平然を装い、スタッフ達の所に帰ると

「ネコ、飼い主が連れて帰ったよ」
と言ってくる

「は?」
どういう事か聞いてみる

どうやら飼い主も自分の捨てたネコが気になって見に来たらしい
だが捨てた場所にはネコもダンボールも跡形もない、そこで

「ここのネコはどうなったか?」
と声を掛けてきた

「どうもこうも、あんたが捨てたネコで現場が大騒ぎになった、そもそも… …」
と、よってたかって説教をして

「本当に困っているのなら、後日改めて里子の相談に来い」
とネコを連れて帰らせたとのことだ

ほぼ100%の対応である


「ところで遅かったねぇ、何してたん? 血ぃ出てるし…」
 バイトさんから聞かれる
腕を見ると少し血が滲んでいる、暴れた時に机か何かで切ったのだろう

「…それがねぇ…」 
警官詰め所で起こったことを説明する、無謀な行動を咎められるかと思ったのだが

「それはポリスが悪い、怒って当たり前だ、よくやった」
と全肯定である、これは意外だ

だがすぐに

「でも、大人の取る行動じゃないよね~」

「考えて動いた方がよくね?あ、脳の容量が少ないから仕方ないか」

「逮捕されれば面白かったのに、他人のふりするけどね~」

見事な手のひら返しだ、フルボッコになる、そして

「もう今日は檻に入っていた方がいいよ、後でコーヒー持って行くから危ない人は出てくんなよ」
と、ヒツジの柵に追いやられてしまう

ヒツジの中の脚立に座って(まぁ、いいか)と思う、ここは意外に居心地が良いのだ

10分後、ヒツジのおでこをほじっていると、バイトさんがコーヒーと手書きのキャプを持ってきた
新しいキャプにはこう書かれている



[ ホモサピエンス・ヒト科・ヒト 目を合わせると危険 *バナナを与えないで ]


wakage01_09.jpg





                    ― つづく ―

若気の至りの話① 8/10

ここであたしの服装について少し

当時、イベント仕事の時は衣装として、アフリカ自然公園の監視員のイメージで
迷彩柄を着ていることが多かった

この日はデザートタイプの迷彩パンツに白いベストとバンダナ
腰の装備ベルトにはニッパーとハンマーが刺さっている


テントの裏とはいえオープンスペースである、こんなナリの人間が警官3人がかりで連れ出されたわけだ
傍から見ればなかなか素敵な光景だっただろう、ベレー帽を被った私設自警団員も集まってきた

(あ?何だよ、てめーらも見た目あたしと変わんねーだろよ、文句あんのかよ)
と視線を向ける、1度怒るとたちが悪いのだ



wakage01_08.jpg



「俺もあの言い方はないと思うわ、だが捨て猫を持ち込まれてもどうしようもないのよ」
年配のポリスが肩を組んだまま(暴れるのを防ぐため?)話しかけてくる

「ネコを引き取れなんて一言も言ってない、相談に来ただけだ
それを…○○××…ぎゃあぎゃあ…あいつだけは許さねえ、ここへ連れてこい」

と駄々をこねる

「まぁまぁ、○○さん…」

(そういえば、何でこの人はあたしの事を知っているのだろう?)
聞いてみれば、以前、脱走動物の捕獲で一緒に仕事をしたことがあるらしい
所属の所轄も近くで何かと付き合いがあるようだ

「ここは俺の顔に免じて治めてくれないか?」
こう言われるといつまでも怒っているわけにもいかない、それに流石は年配のポリスだ
なだめられていると段々落ち着いてくる

実際、切れた時というのは引き所が難しい、この場は彼が引き所を作ってくれたのだ
ありがたく乗っかることにする

年配ポリスと若ポリスに、暴れて悪かったとゴメンナサイをする、握手をしながら

「でも、あいつにだけはぜってー謝らねえ」
と言うと苦笑いをされる

いつまでも現場を留守にするわけにもいかない
今起きた事をクライアントや代理店に見られてないことを祈りながら自分のブースに向かう






                   ― つづく ―

若気の至りの話① 7/10

脳がフリーズしてしまった…

あたしはここで引き取ってくれと言ってるわけではない、記録をしておいて欲しかっただけだ
それは会話の内容で分かるだろう

動物を押し付けられる大変さはあたしがいちばん理解しているつもりだ
そもそも知識・技術の無い所に仔猫なんかを預けられる訳もない

頭の中で弁当ポリスが言った言葉を復唱してみる

[ お前もどこかに捨てればいいだろ…?]

最初に言ったように争い事は嫌いだ、でもどうしてもスルー出来ない事はあるのだ
このセリフはど真ん中ストレートだろう

[ガッ!] 

1列目の長テーブルを蹴り上げる、脳を置いてきぼりにして身体が勝手に動きだす



wakage01_07a.jpg



「あんた今、何て言ったよ?」 

小さくつぶやいて、そのまま1列目のテーブルを乗り越え2列目に向かうが
足を掛けたところで若いポリスに肩を掴まれる

彼には何の恨みもないのだがそれを考えることが出来ない
肩を掴まれた手を内から取って体落とし気味に引き倒す

標的の弁当ポリスは箸を持ったまま立ち上がっている、その距離5mあまり

地面を蹴って標的に向かうが、すぐに2人のポリスが腕と腰に食いついてくる
動き出しが速い、流石は警官だ

保定されかかった猫のように無茶苦茶に廻って振りほどくと
そこにあった折りたたみイスを当たらないようにブン投げる

2人のポリスがひるんだ隙を抜けて、ふたたび二列目に足を掛けたところ後ろから
チョークスリーパーを掛けられて息が詰まる


wakage01_07b.jpg



「おい、落ち着け!少し落ち着け」
と少し年配の男性の声がする

(そのセリフはこうなる前に言ってくれ、動物屋を舐めんなよ)と、耳には入らない
首を絞める腕の間に手を入れて解きながら振り返る

「まぁ、待て、君は○○さんの所の若い子だろ?」

「へ?」

突然、ウチの屋号を出されて我に返る
動きが止まったところを3人に抑えられテントの外へ連れ出されてしまった





                ― つづく ―

若気の至りの話① 6/10

あーだ、こーだと話していると、近くにいたご婦人が

「1匹なら私が連れて帰りましょうか?」
と声をかけてくれる


wakage01_06a.jpg


(よしきた、今まで数十匹の捨て猫を里子に出した手腕をみせてやる)暫くご婦人と話し込む
話があらかたまとまった頃

「ひどい事する人がいるよねぇ、お巡りさんが沢山いるんだから捕まえてくれれば良いのにねぇ」
と、ご婦人がおっしゃられる

「あはは、そうですねぇ」
笑って答えながら(ああ、そうか)と思う

今回は大規模なイベントなのでホコテンには警官詰め所が数カ所有り、多数のポリスが巡回している
ネコを捨てられたのは仕方ないとして、後々何かのトラブルになっては面倒だ
せっかくポリスがいるのだから、捨てられたという届けは出して記録を残しておこう

100m程先に警官詰め所があるのは先ほど確認している(サボっていたときに)

「ちょっとポリスに届けてくる」
ブースはスタッフに任せて警官詰め所に向かう

警官詰め所は大型の白いテントで、数人のポリス達が仕事をしているのが見える
中に入ると近くにいた若いポリスと目が合ったので話しかける



wakage01_06b.jpg




「○○のブースで仕事をしている者ですが… … ブース内にネコを捨てられたんです…」

「はい?」

「それでウチで保護しているのですが一応、届けを出しておこうと思いまして」
と、説明する

「…ああ、でしたらこちらでお名前を…」
ひょんな話に戸惑いながらも対応してくれる

「よく捨てられたりするのですか?」 
ポリスに聞かれる

「いや、現場に捨てられるのは初めてです、何かいい方法はないですかね~」

と、書類を書きながら若いポリスと話していると
3列に並んだ長テーブルのいちばん奥から4~50代のポリスが弁当を食べながらこう言い放った

「あんた、俺らに捨て猫なんて言われても知らんわ、ここに連れて来るなよ
邪魔だったらお前もどこかに捨てればいいだろ」






                    ― つづく ―
プロフィール

sanchz

Author:sanchz
職業動物家

現在
「パンプキンファーム」オーナー

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
スポンサードリンク
検索フォーム
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。