スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

羊飼いになった話① 10/10

帰り間際、売店で自家製ソーセージをお土産に購入し、順路を出口に向かっていると
後ろからパパパパーンと場内作業用の軽トラが近づいてきた、よく見ると運転席にはボブが座っている。

「ヘーイ」
声をかけてくるから手を振ってやる

「 you~○○~○○○~job~○○~○~with me? 」
お前は才能があるから俺と一緒に羊飼いにならないか?みたいな事を言ってくる。

羊飼いか … … 昔、進路相談の時に

「あたしはオーストラリアにいって羊飼いになる」
と、言って職員室を凍りつかせたのを思い出す。

「…考えておくよ、でもウチにはもう羊がいるんだ」と、言ってやると

「 Ha,ha,ha,ha 」
と、笑いながら手を振って、ナンバーのついてない軽トラで走り去って行った。

「少し、やりたいと思ったでしょ?」
相方さんが聞いてくる。

「まぁね…」
曖昧に返事を返す

あたしにはあたしの仕事がある、三桁を超える数の手下どもがいるのだ…
仕事のことが頭に浮かぶが、すぐに頭の中から締め出す

「さぁ、行こう」

今日は無責任に遊びに来たのだ、仕事の話はナイナイしよう
そして、逃げる準備をしてから相方さんに声を掛ける

「バックから何か出てねーか?」



hitsujikai10.jpg





                   羊飼いになった話①
                    
                    ― おわり ―
スポンサーサイト

羊飼いになった話① 9/10

その後ショーは、ボブが犬を使って青い羊を仕分ける作業を見せてくれて終わりになった。

牧場内を歩きながらずっと疑問に思っていた事を考える。

結局あたしは何の手伝いに出たのだろう?ただ1人で羊と踊っただけではないか?
ブツブツ考えていると、察したのか相方さんがこう言ってくる

「ねーねーあれ、あんたが成功させたらダメだったんじゃない?」

「ん?」

「だから、人間が失敗したことを、犬が成功させるってのをやりたかったんでしょ」

ああ、そうか…その段取りをあたしが台無しにしてしまったと…どうりでボブが固まるわけだ。

「あーあたしがいらん事したんだ、悪い事したかな?」

「別にいいんじゃね?みんな盛り上がっていたし」

「だよね~」

「あんたの変な動きも見れたし」

「あん?」

「ってか、必死すぎて何かキモかったし」

「 … … 」

と言うような可愛くない事を言いやがるので
さっき拾ったシマヘビの抜け殻をそっとバッグの中に潜ませてやる
後でほえずらかくといい。


hitsujikai09.jpg




                      ― つづく ―

羊飼いになった話① 8/10

先頭の羊があたしの横を通り抜ける
どうやら人間にぶつかるつもりはないらしい。

まずは、左側を駆け抜けようとする青い羊に体当たりをかましてコースを変え柵(小)に向かって叩き込む。

振り返って2頭目を探す、草原の緑の中で青い羊はよく目立つ
5m先に目標がいるのが目に入る、しかし目標との間に2頭のじゃまな羊がいる。

2・3歩助走をつけ、じゃまな羊に手を掛けると2頭まとめて背中を滑り抜け
そのままの勢いで青い羊にヘッドロック、並走しながら柵(小)に誘導する。

(さて、3頭目は?)振り返った瞬間、青い斜線があたしの横をすり抜けた
(ちぃ)と思うが、こちらも身体が反応し、反転して追いかける。

トップスピードはともかく初速はあたしの方が速い
これでも学生時代は100mを11秒台で走っていたのだ。

尻の毛を鷲掴みにしてズルズル引きずり、柵(小)のゲートをくぐらせる。

hitsujikai08a.jpg


青い羊を仕分け終わり、我に戻って振り返ると、お客が大喜びで拍手をくれている
スタンディングオベーションでも起こりそうな勢いだ。

ステージを見るとボブが唖然とした顔でこちらをみていた
先ほどまでのニヤケ顔はどっかにいったらしい。


(あちゃ~やってしまった)と思う、羊の群れが迫って来たときに意識が飛んでしまった
あたしは無難に一般人のフリをしておきたかったのだ。

「もう、座ってもいい?」
とボブに聞く

「OK、OK、OK、サンキュー、サンキュー」
とボブ、そしてあたしを指差すと

「ユーハ、ニホンジンノ、カワヲカブッタ、ニュージーランドノヒツジカイダ」
と言って会場の笑いを取り、手を差し出してきた。

(いや、あたしは日本人の動物屋だよ)と思いながら握手を交わす
今度はあたしの方がニヤケ顔だっただろう。


hitsujikai08b.jpg





                       ― つづく ―

羊飼いになった話① 7/10

仕方ない
無難にこなしてこの場を切り抜けようと覚悟を決めてボブの説明に耳を傾ける。

数10頭の羊の中に3頭だけ背中に青いペイントをした羊がいる
その青い羊を小さな柵の方に分けて欲しい。

という感じの事を行っているらしい、確かに背中に青いらくがきの入った個体が3頭ほど見える
さらにその羊が入っている柵(大)から柵(小)までの間は3mくらいのコースになっていて
柵(小)の手前で分岐になり、柵(小)行きと草原行きに分かれているのを確認する。


hitsujikai07b.jpg


ボブが客席に向かって今から行う事の説明を始めるが相変わらず2言語ミックスなのでお客はポカンとしている
まぁ、前に出ているあたしがよく分かってないのだからしかたないだろう。

説明が終わるとボブに、柵(大)と柵(小)の間のコースに連れていかれた

「ステンバーイ」
と言い残してボブが離れて行く。

(おいおい、すてんば~い、じゃねえ!もう少し説明しろよ、助手の娘も通訳する気まるでねーだろ!)
と心の中で文句を言う、ちらりと20m先の羊の群れを見る(はぁ~…青い羊?分けろ?どうしろと…?)
非常に好ましくない状況である。

「○○~○~○○…OK?」
ボブがニヤケ顔で言う

(いや、良く分からんし…全然OKじゃねえ!)あたしは首を傾げて見返すが、あたしの都合は無視して

「OK、○○~○○○~○○~~Let‘s Go!!」
と犬笛を短く吹き鳴らす

「ピイッ」

犬達が羊の群れの中に飛び込むと早送りの雲のように群れの形が変化する
そして一呼吸置いた後、柵(大)のゲートからいっせいに羊達がはみ出てきた

(うぉ!マジかよ)羊の塊がこちらに向かってくる、その数20頭余り。
なるほど、これは年配者や子供を選べるはずもない、生け贄みたいなもんだわ
妙に納得してる場合ではない、羊の群れは目の前に迫っている。


(どうする?どうって青い羊だろ?)青い羊が目に入る

(あいつか?)目標を確認する

(あいつを捕まえればいいんだな?)意識が作業に集中してゆく。


hitsujikai07a.jpg




                     ― つづく ―

羊飼いになった話① 6/10

「ピィーーゥィ」

ボブの長い笛で犬がスッ飛んで行くと、丘の向こうから羊を追い出しにかかった.

大きく周りを囲みながら足元に絡みついたり、背中に飛び乗ったりしながら
だんだん囲みを小さくしている。
そして、あれよという間に羊を1つの塊にしてこちらに連れてきて大きな四角い柵の中に入れ込んでしまった。

「おお~」
客席から拍手が起こるとボブがドヤ顔でニヤニヤしている、拍手をしているとボブが客席に向かって話し出す

「○○~~○○… … ○○…」
どうやら今からやる事を手伝って欲しいと言っている

「ダレカ・テツダテクレルヒト、テヲアゲテクダサーイ」
とボブ、だが誰も手をあげる様子はない。

あたしも日本人である、こういうのは苦手だ、当然手はあげない
ボブが会場を見渡すが不自然に目をそらす、しかし座った席が正面最前列である
ボブがニヤケ顔であたしを覗きこんできた。

「ユー、テツダテクダサーイ、プリーズ」
(ちょ、マジかよ!!)あたしは緊張するとお腹が痛くなるから嫌だ
もっと真人間そうな年配者か子供にでもやらせろよ

と言いたいところだが周りのお客から拍手が起こる
この空気感を壊す根性はとても持ち合わせてない、やはり日本人である。

隣の相方さんを見ると、他人のフリをしてよそを向いている、なんて薄情な奴だ。


hitsujikai06.jpg




                     ― つづく ―
プロフィール

sanchz

Author:sanchz
職業動物家

現在
「パンプキンファーム」オーナー

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
スポンサードリンク
検索フォーム
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。